MBTシステム

MBT System Applianceに関して

スタンダードエッジワイズメカニクスの時代
“The Latest and Best in Orthodontic Mechanism”
これは、Angle.E.H(図1)が1928年発表した論文のタイトルである。“最終的で最良の装置”と称している点からも、その苦心して矯正装置および治療法を考案したことがうかがえ知れる。永久歯列期(永久歯のみの歯並び)の不正咬合を歯に装着した装置とワイヤーで治療しようとする試みはAngle.E.H.らによって1899年から始まった。彼は三次元的に歯牙の移動を行えるように幾多の試行錯誤を重ね、現代の矯正治療における基本概念を1928年に完成させた。エッジワイズ装置とその治療法(図2)である。ワイヤー断面が長方形のアーチワイヤー(レクタンギュラー ワイヤー)と精密に適合するエッジワイズブラケットによって三次元的に歯牙の移動を行い、理想的な歯列(歯並び)と咬合(かみ合わせ)を完成させるという治療法である(図3)。現在まで多くのエッジワイズ系テクニックが、この基本的な装置構造を手本として開発されてきていることからこのシステムの完成度がうかがい知れる。しかしAngleの治療法は非抜歯(歯を抜かずに不正咬合の治療を行うもの)であった。Angleの急逝後、Angleの高弟に引き継がれたエッジワイズ法は、Tweed, C. H.(図4)によって問題点が指摘された。Tweed はAngleの教えどおりに上顎前突症例(いわゆる出っ歯)の治療を行うと、上下顎突症(上下の前歯が前方に出てしまい上下の唇が前に突出)を作ってしまうことが多いと指摘した。彼の考えは第一小臼歯の抜歯を行い、スペースを確保して前歯を後方へ後退させ唇の突出を改善しようというものであった。彼の考えは革新的な試みであった。そして、多くの治験例(治療例)を示した。その治療法はアーチーワイヤーにループを組み入れて前歯を後方移動させるテクニックであった。そして、抜歯して得られた空隙を最大限利用するため、大臼歯が前方に移動してこないようにするための工夫(排列後の下顎の歯並び全体を固定源とし、下顎大臼歯から上顎前歯にゴムを装着する方法)など革新的なものであった。高く評価され、多くの支持を得ながら今日に至っている。続いて、1951年になるとBull, H. I.も上顎前突症例(いわゆる出っ歯)の治療には4本の小臼歯抜歯が、横顔における上下唇のバランスを整えるには必須であると唱えた。彼の革新的な試みは小臼歯抜歯後、犬歯(糸切り歯)を後方へ移動する際にBullループといわれる部分的なワイヤーを用いたこと、犬歯を後方移動した後に前歯を後方移動するという2段階に治療を区分したことにある。以後40年間、エッジワイズ法は正確な3次元的な歯の移動を行うために、ブラケットの改良やアーチワイヤーの屈曲で行おうとした。現在、“スタンダードエッジワイズメカニクス”と呼ばれている。
このスタンダードエッジワイズメカニクスは、以下の欠点が考えられる。

1.犬歯や前歯の後方移動期間中に副作用(犬歯や前歯が後方へ倒れてしまう)が大きいため、その副作用を是正するために時間が必要となり結果的に治療期間の延長が起こってしまう。
2.微妙に異なって屈曲されるため、ワイヤーの交換時にジグリング(根の揺さぶり)による歯根吸収(歯の根が吸収してしまい短くなる量が多い)が起こる。
3.装着されるアーチワイヤーに複雑な屈曲がされているために、虫歯や歯肉炎、歯周病、頬粘膜の裂傷が起こりやすい。
4.毎回の処置時間が長い。
5.治療精度が低い。
6.治療終了時の歯列弓形態は担当している医師の好みになってしまい科学的根拠がない形態で終了してしまう。

等の問題があった。

プリアジャステッドブラケット時代の到来

(第一世代)
そこで、Andrewsが1972年に矯正治療経験のない正常咬合者の咬合状態を治療目標として、それを達成するために、まず、一定の計測基準に基づき120名の模型から各歯牙の3次元的データを取り出し、それらを精密に組み入れたエッジワイズ装置を完成させた。従来のワイヤーに屈曲を行って各歯の3次元的な角度を組み込み移動させるテクニックとは、発想を変えてブラケット装置に各歯の3次元的な角度を組み入れて各歯を理想的に移動させようとするテクニックである。したがって、歯を移動する際のアーチワイヤーにループや屈曲を加える必要がなくストレートワイヤーなワイヤーを使用するためストレートワイヤーエッジワイズ装置(以後SWAと略す)と呼ばれた。SWAの出現は、ブラケットのボンディング法や形状記憶合金などの技術革新と相まって事態を一変させた。この装置と治療法の発表は70年代の矯正界にとってセンセーショナルなものであり、エッジワイズ法における装置のプリアジャステッド化、治療システムのシンプル化が決定的なものになった。しかし、革新的な装置と方法を開発したにもかかわらず、多くの矯正歯科医は1970~1980年代は治療成績が安定しないことが多く困惑していた。治療成績が安定しなかったからである。治療成績が安定しない原因として、Andrewsは様々な症状の症例に対して多くの種類の対応ブラケットを開発して選択することで対応を図った。その結果、臨床医は多くの在庫を抱えることとなり、選択する困難さがあった。また、この新しい技術系に従来のスタンダードエッジワイズ装置を用いた場合の治療法を多くの矯正歯科医が用いたことが原因であった。ブラケットポジッションや固定法、アンギュレーションやトルク(各歯の3次元的な傾き)、そして、イン/アウトなどの量(最終的な歯列弓の形態)、空隙閉鎖法、ループを用いない矯正力の適用法と力の大きさなどすべてに関して従来のスタンダードエッジワイズ法とは異なっていたからである。ストレートワイヤーエッジワイズ装置が正常に機能するには“ストレートワイヤーメカニクス”が用いられなければならなかった。

(第二世代)
プリアジャステッドブラケット第二世代として位置づけられているRothは1987年、様々な症状の症例に対応するブラケットを一種類ですむように開発した。前述した時代背景からRothの提案は多くの矯正歯科医に受け入れられた。また、治療法においても多くの提案を行った。治療前に下顎(したあご)の位置を確認するために、ナソロジカルスプリント(プラスティックのマウスピース様のもの)を使用して本来の下顎骨の位置を確認して診断作業の精度を向上させようとした。また、一部の症例であるが矯正治療後、後戻りする場合がある。予め矯正治療後の後戻り量を見積り、エッジワイズ装置に3次元的なデータを盛り込んで治療を終了させる。その後、トースポジショナー(模型上で歯をばらばらに分割してワックス上で並べ直して作製するゴム上のマウスピース用の装置)を使用させて治療を終了させる2段階治療を提唱した。アーチワイヤーの形態に際しても、下顎骨の前方運動に支障がないようにとの配慮から、犬歯間を故意に拡大させた形態のものを採用している。本来の下顎骨の位置を治療前に確認してから診断を行う工程に関しては意義のあることであると思われる。しかし、国内外を問わず矯正治療を行っていない正常咬合模型の3次元的な分析が進んでいるが、Rothの推奨する犬歯間が広いアーチワイヤーと相似するものはない。また、エッジワイズ装置に盛り込まれた3次元的なデータ、特に臼歯部の頬舌的(舌側への傾き)が強すぎることと前歯を後方へ移動させる場合にループが入ったアーチワイヤーを使用して行うために矯正力が強すぎるため、治療終了時に臼歯部が舌側へ傾斜しすぎてしまうことが懸念される。

(第三世代)
プリアジャステッドブラケット第三世代として位置づけられているMcLaughlinとBennettらが力を注いだのはまさにこの点にあった。1975年から1993年の間にAndrewsのスタンダードSWAブラケットを多くの症例に用いた結果を考慮して、スライディングメカニクスと弱い持続的な矯正力に基づいた治療法を発展させて改良を加えた。これらの治療法は1993年の彼らの著書と発行され、広く世界に受け入れられた。当初のかれらの治療法の提案は

1.正確なブラケットポジショニング法
2.治療初期におけるアンカレッジコントロール(固定源の確保)のための副作用の無い“弱い矯正力”とレースバックの推奨。
3.前歯の後方移動時、前歯の理想的な角度を保ったまま後方移動させることが好ましいが、当時さまざまな治療法では細いワイヤーにループを用いて防止しようとしていたため、前歯の舌側傾斜(舌側への傾斜)防ぎきれなかった。そこで、彼らはより太いワイヤーを用いて前歯の角度を保ちながら、弱い矯正力を発揮するアクティブタイバックを考案して治療成績を向上させた。
4.治療を行っていない正常咬合歯列弓形態に相似するアーチフォームワイヤーの使用推奨
5.歯をより精密かつ効率的に移動させるための診断法:Dental VTO
(詳細については本クリニック院長が米国3M UNITEK社から依頼を受け、世界108カ国に出版した雑誌を参考にしてください。)

以上5点にまとめられる。
治療精度および治療速度とも格段に向上した。

続いて、McLaughlinとBennettは1975年から1993年の間にTrevisiを加え、共同でオリジナルSWAにみられた欠点を克服するために、全てのブラケットシステムに改良を加えた。改良に際して、Andrewsのオリジナルデータを再検討し、さらに日本国内で行われた日本人正常咬合の研究データを取り入れた。MBTブラケットシステムの誕生である。ブラケットのデザインを変更したことにより、治療後の歯列弓形態および各歯の角度がより正常咬合に近く理想的なものとなった。これらの治療法は1997年の彼らの著書として発行されている。彼らの向上心はこれに止まらなかった。彼らは治療メカニクスをより完全なものとするために、1997年から2001年にかけて研究し、さらに改良を加えた。アーチフォームとアーチワイヤーの選択法である。アーチフォームを3種類から選択できるようにして、あらゆる形態(人種)の歯列弓に対応できるようにした。さらにアーチワイヤーの材質に検討を加え各治療段階における最適なアーチワイヤーを導いた。今までの研究結果、ブラケットの3次元データ、治療法に外科的矯正治療のガイドライン、空隙閉鎖をさらに早く閉鎖する装置(Hycon装置:本医院の院長がMcLaughlinと日本人発共同論文を発表)を追加して2001年に世界に向けて出版され広く矯正歯科医師に受け入れられている。本誌に関して、翻訳本が2002年において本医院の院長も参加して出版されているので、興味のある矯正歯科医の方は参考にしてください。(Systemized Orthodontic Treatment Mechanics)

以上のことからMBTシステムメカニクスは伝統的な治療方法を検討し、ブラケットおよびアーチワイヤー等の矯正装置の開発を行うばかりではなく、治療法、診断法をトータルした世界最高水準を誇る最新の治療フィロソフィー(法)である。McLaughlinとBennett、Trevisiの功績により治療期間が従来の治療期間に対して半減したばかりではなく、その精度も向上したことは周知の事実である。彼らの功績に感謝したい。McLaughlinとBennett、Trevisiらは、まだ満足してないようである。


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by familyd | 2009-09-23 12:03 | MBTシステム


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